マーブルアーチ付近で道を聞いてきた二十歳そこそこのキラキラした瞳のインド系の青年。イギリスに来たばかりなのかほとんど英語が話せない。通りの名前はその時まさにいた所。でも、その付近の建物には全く番地が付いていない。手近な店に入って番地を聞いてみようかと思っているところへインド系の女性が「どうしたの〜」と割り込んできた。「番地がわからなくて」と説明すると、その女性、青年にグジュラティ、なのかベンガリーなのか、パンジャビなのか、で、なにやら聞いた。彼女によると「彼のボスがその住所の弁護士の所に行くように」と指示したらしい。「弁護士に払うお金も持ってるよ。ほら」と道のど真ん中で現金を出してみせる青年。君,いったいどこから来たんだい……人を疑うということを知らないのか。
するとその女性、「ああ、その弁護士ダメ、私がもっといい弁護士を知っている」と青年を連れて行ってしまった……。
それももう三年ほど前のこと。
今でも時々その青年のキラキラした瞳を思い出す。その女性が本当に親切な人であったことを願うのみ。